このブランドがすごい TOP3 2021年度版【後半】

Mercedes-Benz S-Class

 

HMIの視点で2021年に注目すべきブランドランキングの後半です。前半をお読みでない方はこちらをどうぞ。前半では1位は総合的に優れ成長スピードの速いメルセデス を1位としましたが、後半ではそれぞれ異なるアプローチで魅力的なHMIを作る2位と3位をお伝えします。

 

2位 テスラ

Tesla Model 3

 

注目ポイント
1.アップデートのたびに大幅に向上
2.センタースクリーンに操作を集約する思想
3.Model 3のシンプルな操作性

 

注目車種
Model 3
以前はテスラの量産車は車自体の品質は他の自動車メーカーと比べることが出来ないほど低く、1000万円を超えるModel Sですら自動車という工業製品としては価格に見合わないクオリティでした。しかしこのブランドの本質的な価値は今までの自動車産業の概念に捉われない開発手法とHMIにあります。継続的なオンラインアップデートが前提のため、ユーザーに届いた状態では機能しないハードウェア(この場合は車体側面のカメラ)を搭載していましたが、アップデートによりアクティベートされ自動運転機能が使用可能になった等、いままでの自動車からは常識外れで考えにくい作り方と売り方を行っています。
注目すべきモデルはModel 3を選びました。エントリーモデルであるModel 3はドライバー前のメーターを無くし、センタースクリーン1枚に操作を統合しました。サイドウインドウやエアコン吹き出し口の操作すら物理的なボタンやレバーではなく、センタースクリーンのタッチ操作で行うことからも極端に全ての操作をスクリーンに集約する彼らの思想が見て取れます。
中国市場では、テスラ上海工場の可動によりModel 3が競争力のある価格で中国市場に投入され、もともとの中国メーカーが占めていたミドルクラスEVのシェアを奪っています。

 

PERCHの視点 グラフィックスデザイナーが開発するメーター
テスラのHMI開発は自動車のバックグラウンドがないからこそのデザインを実現しています。たとえばドライバー正面のスクリーンすらもなくしてしまったのはその一例でしょう。いままでの自動車メーカーならではの常識がテスラにはありません。
現在、多くの自動車メーカーではメーター担当部署を中心にHMIの開発を行っていますが、テスラはモバイルアプリやWebを開発していたエンジニアやグラフィックデザイナー等が開発の中心になっているように見えます。自動車メーター開発の常識を無視し、広告販促制作の経験則を使った点がいくつも見受けられるからです。具体的な2つの例を見てみましょう。

・各要素間の空間を広くとり、読みやすくする
これはグラフィックスデザインの基本原則の1つです。要素を詰め込みすぎるとどこをみていいのか分からなくなり、見てもらいたいことが伝わらなくなるからです。「重要性」「色」「大きさ」「配置位置」などを加味して最適な大きさやレイアウトを設定するには担当デザイナーのセンスが問われます。テスラはこの点が非常に優れています。

・必要なものを目立たせる色使い
これはスマホなどの操作系UIや、プレゼンなどの資料作成等にも用いられる原則です。大きな面積を占める背景や重要ではないものを暗くして、目立たせたい部分を鮮やかな彩度の高い色にしています。これにより瞬時に目線を誘導できると同時に、処理する情報が少ないために理解が早まります。
先進性や流行という点でも優れています。全体のデザインに色が溢れていると統一感を取ることがより困難になり、ダサい/古臭いといった印象を与えるのに対し、少ない色数で統一することで今風でスタイリッシュな印象を与えています。

参照:BUSINESS INSIDER 「ようやく出荷?5万7500ドルのテスラ3に乗ってみた」https://www.businessinsider.jp/post-169107

 

3位 ランドローバー

Land Rover Discovery

 

注目ポイント
1.魅力的な意匠のHMI
2.ブレミアムブランドとしてのHMIブランディング
3.使いやすさのための柔軟な開発思想

 

注目車種
ディフェンダー(2019〜)

経営不振から一時存続が危ぶまれ、新規モデルの開発もスローダウンしていたランドローバー ですが、既存のプラットフォームなどの資産を使いつつ、魅力的なデザインのモデルを連発し見事に復活しました。魅力的なモデルのコンパクトSUVやラグジュアリーSUVのヒットで生み出した利益を適切に電動化技術やHMI研究に投資したことで確実に技術面でも魅力のあるブランドになりました。
搭載するHMIは使やすさや先進機能の搭載はもちろんのこと、意匠面での美しさは他のブランドを凌ぎます。HMIの意匠で美しさを感じさせるブランドはまだ数えるほどしかありませんが、その中の代表と言えるでしょう。具体的には画面中に出てくるグラフィカルな要素の世界観が統一され、デザインのトーン&マナーを高い次元でコントロールした優れた意匠だと評価しました。車種やブランド全体で統一感を持ったHMIデザインがユーザーへの安心感につながり、買い替えをしてもまた同じブランドの車を買いたいと思わせる魅力があります。
注目すべき車種は2019年に発表された新型ディフェンダーです。オリジナルは軍用車をルーツとした無骨で本格的なクロスカントリーモデルでしたが、最新技術とモダンで魅力的なデザインで新たに登場しました。先代を現代的に解釈したデザインは遠くからも間違えることがないほどアイコニックです。HMIに目を移すと、小型のセンタースクリーンとドライバーのフルデジタルメーターを装備する現代では一般的なレイアウトです。エアコン温度調整がタッチスクリーンでしたが最新モデルはもう一度アナログに戻しました。HMI開発を柔軟に考え、常にユーザーの使いやすさのためにHMIを変化させながら進化していることが感じられます。

 

PERCHの視点 世界の流行発信地イギリスが作る美しすぎるデザイン
彼らがHMIに美しさを与えることができたのはなぜでしょうか。美意識の有無と言ってしまってはあまりに乱暴かもしれませんが、実際にデザインを担当するデザイナー以外のエンジニアや経営層にデザインの価値が認められていることが、細部まで妥協なくデザインされた完成度の高いHMIに繋がった理由の一つかもしれません。
イギリスはファッション/建築/アートなどで新たなトレンドを作り出し、世界に発信する土地であることも優れた製品デザインにつながっていると考えられます。

・まるでポスターのようなデザインレイアウト
背景には写真を置き、中央にタイトルをシンプルに配置しています。上下左右の余白、各要素の余白は完璧な統一感でバランス良く配置されています。まるでグラフィックデザイナーが0.1mmのずれを調整しながらポスターを作っているようです。画面一つ一つにかけた美意識には優れたグラフィックデザイナーが、すべての画面でトーン&マナーが崩れないようにしたアートディレクターの力量が高いことが伺えます。

・オリジナリティ溢れるアイコン
ありふれたアイコンでは「特別感」が失われるため、デザイン全体のトーン&マナーにあったオリジナルアイコンを開発しています。非常に良くできたアイコンで、オリジナリティだけでなく容易に意味がわかる従来のアイコンとの類似性も加味されています。アイコンの制作なんて簡単と思われるかもしれませんが、実は非常に奥深く、新しい大規模なビルなどで使われているアイコン(業界ではサインと呼びます)は専門のデザインプロダクションが高額な費用で制作するのが一般的です。

 

番外編 GM(ゼネラルモーターズ)

GMC Hummer

 

注目車種
Hummer EV

番外編はGMのHummer EVを選びました。原油高等での販売の落ち込みを理由に2010年に廃止されるまで軍用四輪駆動車の民生版を展開していましたがEV化により復活します。1000hpの最大出力とハンズフリーでの部分自動運転を搭載し、ラグジュアリーSUVを求めるユーザーの強力な選択肢になります。
HMI視点での注目は画像処理エンジンとして搭載されるUnreal Engineです。いままでGMブランドのHMIは機能的にも意匠的にも古臭く見るべきポイントがありませんでしたが、最新のビデオゲームを支えるUnreal Engineの採用で高度な3Dグラフィック技術や高度な開発環境が提供されることで、エンジニアやデザイナーがどのような魅力的なHMIを開発するのか注目されます。

 

PERCHの視点 お金持ちの遊びから始まったブランド
Hummerブランドは米国の富裕層を中心に人気がありますが、日本でも独特な存在感からファンが多い車両です。一部のセレブリティが軍用車に只者ではない魅力を感じ、民生版をメーカーに作らせたことからHummerブランドは始まっています。ユーザーはパワフルでタフなHummerのイメージに憧れ、自分もそのストーリーの一部になりたいと熱望します。普段の生活には必要がないほどのパワーやサイズに優越感を感じたり、本来の用途とあえて違う使い方をすることで「新しい使い方を発見、楽しんでいる優越感」という遊びに価値を感じます。
同じ顧客を持つハイファッションブランド(世界的なファッションブランド)でも、今まで使われなかったモチーフを取り入れ、誰も思いつかなかった概念を提案することが必要とされています。
例えばDOLCE & GABBANAなどコレクションを見ると、モチーフはテクノロジー、民族衣装、大衆文化、オタク文化などファッションとは無縁なものから彼ら独自の視点で再発見し、デザインに取り入れています。このようなファッション界で多用される文化的に高度な遊びは、Hummerに根強いファンがいる理由と同じ心理だと考えられます。

参照:Dolce & Gabbana FALL 2021 READY-TOEWAR by VUGUE Runway サブカルチャーやストリートファッション等からの影響を強く感じるコレクションhttps://www.dolcegabbana.com/ja/fashion-show-woman-winter-2021/?HP_BAN=FW21-WOMEN_210311_stripe9_slide_1

 

いかがだったでしょうか。様々なブランドが異なる思想でHMI開発を加速させていました。今後HMIがいままで以上に重要になり、魅力的なHMIが車の付加価値を高めていくと思われます。ライバルたちの今を知ることで今後進むべきHMIのヒントになるかもしれません。

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